感染症・自然災害等を想定したVRイベント・カンファレンス開催ソリューションのご提供について

2020年2月

感染症予防や自然災害による交通機関の麻痺等により、展示会・講演会・スポーツイベント等が実施できないケースが増えてきました。現地を訪問して顔を合わせたり、本物の存在感を感じたり、友人・アーティスト・スポーツ選手との時空間の共有が素晴らしいのは言うまでもありませんが、それが難しい場合には情報技術・VR技術が代替案になるのではと考えております。

360度写真を用いたパノラマバーチャルツアー制作ツール:PanoPlaza Tour

当社では、創業以来空間表現技術と題して技術開発をして参りました。VRやヘッドマウントディスプレイがいまほど普及する前から、バーチャルイベントソリューションとして、360度写真や360度動画を活用したコンテンツ開発・プラットフォーム提供を行っております。PanoPlaza Tourでは、お客様が撮影した360度写真を当社クラウドサービスにアップロードして、複数の360度写真を連携させることで、Googleストリートビューのようなバーチャルツアーコンテンツを作成できます。展示会の準備はしてしまったものの、お客様を受け入れられないご状況の場合などにコンテンツとして保存しておくのはいかがでしょうか?


3DメタバースVRサービス

また最近では、CGベースの仮想空間を使用したクラウド型プライベートVRサービスも提供しています。本サービスでは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)で体験できる目的特化型3D仮想空間を提供しています。各参加者・出店者はそれぞれアバターとなり3Dメタバースに共存し、そこで展示会・講演会・コンサート体験などを同時体験できます。アバター同士は音声通信はもちろんのこと、頭や手の動きなどのモーションデータもアバターに反映することで、テレビ電話以上に共存感を得られるものになっています。また3D空間でPDFの資料や動画を再生できるようにすることで、講演などの実施も可能になっています。


このような社会的危機状況に、XR(Extended Reality) Engineering Firmとしてできる社会貢献をすべきという考えで本記事を書きました。もしお手伝いできそうなことがありましたら、お気軽にご連絡を頂ければと思います。

カフェの集客に効果的な情報とは

2014年5月

3月下旬に公開された「AirWALLET X CAFE」。掲載するカフェの店内をパノラマとして紹介するために
約90店舗ほどのお店で撮影を行いました。

一口にカフェといっても、それぞれ個性溢れるカフェが多いという事を肌で感じました。それと同時に、そんな個性的なカフェの中から、名前もまだ知られていない顧客にお店を認知して貰うのは、なかなか大変なのでは?という事も感じました。

そこで、カフェに来店するきっかけとして、どのような場面があり、その際、来店前に欲しいと思われるお店の情報(以降、「インプット」と表記します)としてどのような情報が求められているのかを考察したいと思います。

カフェを利用する場面とは?

さて、日常の中でどういった場面でカフェを利用するでしょうか?

カフェに来店するシチュエーションは、いろいろあるかと思いますが、「インプット」という視点から大別すると以下の用なシチュエーションに分けられるかと思います。

シチュエーション1:休憩

通勤や買い物など他の目的があり、その途中で休憩・気分転換として来店する場合です。この場合の「インプット」は、その道中にお店が偶然あったり、既に知っているお店が挙げられます。

シチュエーション2:紹介

知人から勧められたカフェに来店する場合です。この場合の「インプット」は、知人からのダイレクトな情報です。

シチュエーション3:目的

ゆっくりくつろぎたい。お客様と商談をしたい。などカフェに行く事を目的に来店する場合です。この場合の「インプット」は、既に知っているお店か新規のお店を自分で探す必要があります。

情報「インプット」が求められているシチュエーションは?

上記シチュエーションの中で、来店前に欲しいと思われるお店の情報「インプット」が最も必要なのは「シチュエーション3:目的」の場合です。
読書をするのに適しているお店か?商談利用するのにテーブルとテーブル間が狭すぎないか?貸切パーティで参加者の好みに合っていそうか?など、収集したい情報は様々ですが、その際、お店情報を収集するツールとして主流となっているのは、”食べログ”や”ホットペッパー”、”ぐるなび”などの外食情報サイトです。

私自身、事前にお店の情報を上述の外食情報サイトで検索し、そこから得られた情報を元に勝手にお店のイメージを想像していました。
実際に伺ってみると、お店のイメージより素敵な雰囲気のカフェがたくさんあり、「百聞は一見にしかず」という言葉を痛感しました。そのように感じたのは、やはり掲載されている情報、特にお店の写真数枚だけでは中々お店の雰囲気を100%伝えきれていないためだと思います。

特にカフェというジャンルで見ると、その空間を求めて立ち寄る事が大きいと思います。お店の雰囲気やレイアウトは、目的にあったカフェを発見するうえで、大きな比重を占めます。

リアルの店舗では、BGMがかかっていたり、現地でしか味わえない空気がありますが、事前の情報収集という観点で見ると、カフェの様な室内の雰囲気を大事にしているお店こそ、360度のパノラマ情報が生きてくると改めて思いました。

ぜひお客様にアプローチする「インプット」の手段として「AirWALLET X CAFE」を活用し、店内の雰囲気を紹介してみてはいかがでしょうか。

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世界中の素敵なパノラマコンテンツ その1

2012年12月

こちらの記事(パノラマを利用したアプリ紹介 | PanoPlazaで)パノラマを活用したiOSのアプリについて、いくつかご紹介しました。今回は、パノラマを使ったWebコンテンツやその他コンテンツについてご紹介します。

パナソニックの5面ディスプレイパノラマ3D映像空間

パナソニックとユネスコは、ユネスコ世界遺産センターと世界遺産の保護や次世代教育を目的としたパートナーシップを結んでいます。パナソニックの最新3D技術を駆使した5面のプラズマディスプレイで作り出すパノラマ3D映像空間「DIVE into World Heritage」が開発され、11月6日から8日まで京都・国立京都国際会館で開催された「世界遺産条約採択40周年記念最終会合」で展示されました。
下の映像では、「DIVE into World Heritage」に加え、グランドキャニオン、イエローストーン、ストーンヘンジなどの世界遺産に足を運び、5台の3Dカメラを1枚のプレートの上に同心円状に並べて特殊撮影するメイキング映像をご覧になることが出来ます。

【関連リンク】
・ パナソニックのユネスコ世界遺産パノラマ3Dが注目集める – トレンド – 日経トレンディネット
・パナソニックの5面のプラズマディスプレイが創り出すパノラマ3D映像空間「DIVE into World Heritage 3D」 | トピックス | ニュース | パナソニック企業情報 | Panasonic
・ユネスコ世界遺産センターで世界遺産のパノラマ3D映像を上映 [Panasonic]

超高解像度撮影サービスFANCAM

FANCAMとは、株式会社フロンティアインターナショナルの提供する、スポーツイベントやライブ会場で会場を360°撮影し、写真をつなぎあわせたプロモーションサイトを作成するサービスです。一人ひとりの顔が見えるくらいの超高精細解像度(500億ピクセル!)で大規模なイベントを360°パノラマ撮影することにより、会場の迫力と興奮をインターネット上に残すことが出来ます。


現在、欧州を中心にコンテンツは展開されており、サッカーやテニス、ラグビーなどの試合の他、U2のワールド・ツアーのパノラマコンテンツを見ることが出来ます。つい先日、日本初のFANCAM導入例として、倖田來未のライブにおけるFANCAMコンテンツが公開されました。サイトを訪問すると、倖田來未からのビデオメッセージや、パノラマ写真に写っている自分をタグ付けする機能、他にもパノラマコンテンツ上でのクイズなどのコンテンツが用意されています。

【関連リンク】
・【KODA KUMI × FANCAM】Koda Kumi Premium Night〜Love & Songs〜@日本武道館
・FANCAM
・FANCAM | Japan Debut

空から撮影した東京のパノラマ

チェコ在住の米国人写真家Jeffrey Martin氏が来日し、朝日新聞社ヘリ「ゆめどり」で東京上空500mを飛び、東京スカイツリーやレインボーブリッジなどのパノラマ写真を撮影しました。パノラマ写真は通常、6枚程度の写真を合成し1枚の大きなパノラマ写真を合成しますが、三脚も安定しない空中で腕を機械のように動かし、約1時間のフライト中に1千枚程度の写真を撮影したそうです。
通常のパノラマ写真でも上手く合成できずにぶれてしまうことも多くの場面で遭遇します。しかし、これは見事な全方位を網羅したパノラマ写真となっており、一見の価値はあると思います。


【関連リンク】
・ユニークシティ東京、パノラマに チェコの写真家が空撮 – 朝日新聞デジタル
・360cities
・朝日新聞デジタル:本社ヘリから撮影したパノラマ写真「東京スカイツリー」:Jeffrey Martin撮影

360°パノラマを超える表現力!「モーションVR」の現状と今後

2012年11月

モーションVRは「360度パノラマ写真の動画版」?

視野を360度全方位に操作できる、インタラクティブな映像コンテンツのモーションVR。

ここ最近、メディアに取り上げられて話題になる機会が増えてきました。パノラマVRコンテンツと違って、ユーザーが自由にバーチャル空間内を移動できるわけではありませんが、それでも通常の動画と比べると、その情報量や臨場感には圧倒的な差があります。

ネット上では、モーションVRを「360度パノラマ写真の動画版」と表現しているサイトをよく見かけます。確かにモーションVRに馴染みのないユーザに文章で説明する際には、分かりやすい表現と言えますが、コンテンツの成り立ちを考えると、正確には「動画の拡張版」と捉えたほうがよいかもしれませんね。
さて、そんなモーションVRですが、話題の元となっているネタは大きく2つのカテゴリーに分類できそうです。

モーションVRのUGCを可能にするデバイス

UGCとは、User-Generated Contetの略で、プロフェッショナルの作り手ではなく、一般の人々によって作成された様々なコンテンツを意味します。アマチュアのミュージシャンの方がYouTubeに投稿する「歌ってみた」系の動画などは、まさに代表的な例と言えます。

ちょうど、この1年ちょっとの間に、ユーザー自身がモーションVRを簡単に撮影できるデバイスが幾つか登場し始めました。詳細なレビューはここでは割愛しますが、このようなデバイスは前回ブログでもご紹介したbubblescopeに加えて、GoPano microKogeto dotなどがあります。(各デバイスの比較記事はこちらをご参照下さい。)



スマートフォンにワンショットミラーなどをアタッチする形式のものが主流のようです。これにはiPhoneを中心としたスマートフォンユーザの拡大が背景にあることは言うまでもありませんが、興味深いのは、いずれのデバイスも、「パノラマ写真」ではなく「モーションVR」が撮影できることを特長として強調している点です。

パノラマ写真はアプリだけでも撮影できてしまいますが、モーションVRはワンショットミラーなど、物理的な付属物がなければほぼ不可能です。故に、モーションVRを強調しているのだと思いますが、もしかすると、Youtubeのような動画共有サイトの盛り上がりを踏まえ、「パノラマ写真が撮れますよ」よりも、「ちょっと変わった面白い動画が撮れて、友人と共有できますよ」としたほうが、純粋にユーザのウケが良いからなのかもしれません。このような意味においても、モーションVRは「パノラマ写真の動画版」ではなく、あくまでYouTube文化の延長線上にあり、「動画の拡張版」なのだと考えています。

専門プロダクションによる高品質な映像コンテンツ

こちらのネタでは、カーレース、モトクロスバイク、自転車競技、スキー、スカイダイビングなど、いわゆる「エクストリームスポーツ」の競技の様子を収めたものが多く見られます。つい先日も、エクストリームスポーツのスポンサーで有名なRedBullが、自社チームのF1マシンに特殊なカメラを搭載し、そこから撮影したモーションVRを公開して大きな話題を呼びました。

モーションVRは乗り物との相性が良いらしく、国内ではトヨタのプリウスの最新CMでもこの技術が使われています。こちらはTVで放送される映像なので、インタラクティブな操作はできませんが、その分、非常にクリエイティブな見せ方になっています。

こういった高品質な映像コンテンツの裏では、前述のRedBullのモーションVRを制作したMaking View社(ノルウエー)や、他にもYellowBird社(オランダ)など、パノラマ専門プロダクションの存在があるのです。

今後のモーションVR

近い将来、モーションVRというコンテンツがどう発展していくと面白いのか、少し考えてみました。
モーションVRとパノラマVRの最も大きな違いは、「時間軸」を持っているかどうかです。モーションVRは本質的には動画であることから、そこには時間の流れがあり、ストーリー的な意味合いを持たせることが可能です。

では、この「時間軸」をもっと究極的に突き詰めるとどうなるか…?リアルタイム・モーションVRなんてどうでしょう。

現在は、ウェブコンテンツとしての利用がメインですが、個人的にはテレビ放送分野でも活用できる可能性があるのではないかと思います。技術的な制約はここでは一旦置いておきますが、例えば、スポーツのライブ放送。
今年夏に開催されたロンドン・オリンピックでは、様々な最先端の撮影技術が活用されたそうです。世界中が注目する世紀の瞬間を、よりアスリートの近くで、より臨場感あふれる写真を撮影したいと思うのは当然のことです。

ロボットカメラ
ロイター社が保有する遠隔操作が可能なロボットデジタル一眼レフカメラ(写真:参考記事から引用)

もし、このような技術と、モーションVRのリアルタイム撮影・配信技術を上手く組み合わせたら、これまでに無い、全く新しいスポーツの楽しみ方をファンに提供することができると思います。决められたアングルでしか見られないテレビのスポーツ番組なんて、昔の話になるかもしれませんね。

ウェブコンテンツとしてのGoogleストリートビュー(大学編)

2012年9月

Google社は「Googleお店フォト」や「Google Art Project」など、360度パノラマ写真やギガピクセルパノラマ(超高解像度パノラマ)を使ったコンテンツに多方面で取り組んでいます。今日ご紹介するのは、Googleストリートビューのギャラリーに掲載されている79校、121の大学のキャンパスです。今回41校の大学が新たに追加されました。PanoPlazaスタッフの母校もいくつかストリートビュー化されています。

 

日本には国立・公立・私立全てあわせて760校以上も大学があるそうなので、それを考えるとまだ少なく感じるかもしれませんが、360度パノラマ写真で志望校や出身校のキャンパスが見れるというのは、受験生にとっては良いモチベーションになりますし、卒業生にとっても懐かしくてつい見てみたくなるコンテンツだと思います。今後も継続的に増えていきそうですね。

ちなみに、日本で一番最初にストリートビューに対応した大学は立命館大学だそうで、公開記念セレモニーにはGoogleの辻野社長(当時)もいらっしゃたみたいです。

今回のGoogleの発表にあわせて、多くの大学がホームページにニュースを掲載していました。しかし、ニュースページで取り上げるだけでは、時間の経過とともにユーザーの目につきにくくなってしまいます。これに対して、立教大学はキャンパスマップページにストリートビューをiframeで組み込むなど、コンテンツとして上手く活用されていますね。

 

※ネットエイジアリサーチ:「大学選び」についての調査(2009年11月)

少し古い調査結果ですが、大学受験生が志望校の情報を収集する手段として、オープンキャンパスへの参加やPCサイトのチェックが上位に挙がっています。こちらを踏まえると、特に志望校から遠方に住んでいる受験生や家族の目線で考えると、とても便利なコンテンツと言えるでしょう。
遠く離れた志望校のストリートビューを眺めながら、来年春からのキャンパスライフを妄想…なんて十分にありそうです。そんな妄想をかきたててくれるのは、やはりパノラマ写真ならではの臨場感や没入感があるからなんだと思います。360度のパノラマコンテンツやバーチャルツアーは、物理的な距離が離れているほど、「行ってみたいけどなかなか行けない」場所であるほど、価値を発揮するコンテンツです。せっかくの魅力的なコンテンツなので、大学ホームページなど、最大限活用したいところですね。

パノラマ撮影キットの現状と今後について

2012年9月

パノラマ撮影のセルフキット

1ヶ月ほど前の話になりますが、BubblePixというイギリスの会社が提供している、bubblescope(バブルスコープ)というiPhone用のパノラマ撮影キットがニュースに取り上げられていました。このキットはいわゆる「ワンショットミラー」と呼ばれるもので、逆さにした円錐形のミラーに映る全方位の様子を撮影することができます。



※注意:BubblePixとは異なるミラーで撮影した写真

また、BubblePix社は専用共有サイトというを「場」をユーザに提供することで、パノラマ撮影の動機付けをし、結果的にこのハードウェアのプロモーションの役割を果たしていると言えます。

 

セルフキットとPanoPlaza

当社では、このような簡単かつ低コストなパノラマ撮影を可能にするハードウェアに注目しています。というのも、私たちが提供するPanoPlazaはお客様自身でパノラマ写真をご準備頂くところがスタート地点となるサービスで、それ以降のバーチャルツアーコンテンツ制作の工程にフォーカスしています。従って、このようなパノラマ撮影のセルフキットが広まることで、よりPanoPlazaのニーズや利用価値が高まると考えているのです。

もちろん、当社スタッフが現地にお伺いする撮影サービスもご提供しており、非常に多くのお客様にご利用頂いておりますが、「自分たちで手軽に撮影できるような方法はないのか」といったご要望を頂くこともまた事実です。

画質とコストのトレードオフ

さて、このbubblescope、一般ユーザが手軽に簡単にパノラマ撮影ができるというメリットがあるものの、デメリットも残念ながら存在します。それは画質が相対的に見て良くないという点です。

例えば、パノラマ写真が撮影できるiOSアプリの代表格、Photosynthは、撮影した複数枚の写真から、高画質な1枚のパノラマ写真を自動的に生成しますが、bubblescopeの場合は、ミラーに写った全方位の風景を1枚の写真として撮影・加工するため、どうしても画質が劣ってしまいます。逆にPhotosynthは回転途中で上手く行かなくなってしまったり、写真の繋ぎ目が少し破綻してしまうなど、必ずしbubblescopeのワンショットのような手軽さがあるわけではありません。

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このように、現在の技術では、パノラマ写真の画質と撮影コストはほぼ完全なトレードオフの関係にあると言えるでしょう。(例外をご存知の方、ぜひ不勉強な私に教えて下さい!)

今後のイノベーション

このトレードオフ、なかなか悩ましい問題ですが、近い将来、これを覆すようなイノベーションが必ず起こると信じています。特にここ数年で起きたスマートフォンの急速な進化と普及が、写真を軸としたコミュニケーションのあり方に大きなインパクトを与えています。従って、スマートフォンという技術が写真共有アプリの盛り上がりを生み出したのだとしたら、技術的なイノベーションさえあれば、「空間そのものの共有」という新しい形のコミュニケーションが促進されることもあり得るのではないでしょうか。

今後も、パノラマに関連する様々なハードウェアやサービスについて書いて行きたいと思います。

バーチャルツアーはiPadのキラーコンテンツになるか

2012年9月

バーチャルツアーはiPadと相性が良い

PanoPlazaで作るバーチャルツアーやバーチャルショップは、基本的にPC、iPhone、iPad、Androidタブレットでそれぞれ閲覧することができます。必要があれば、PCとiPhoneで画面表示を変えたり、機能を変えたりすることもたまにやります。そして納品時にお客様から頂くコメントの中で一番多いのは、「iPadだと気持ちよく動くねぇ」「タブレットの方が、直感的に楽しめるね」というものです。360度パノラマのコンテンツは、タッチで視点を操作したり、ビンチで拡大するなど、タブレットの操作と非常に相性が良いというのが、私たちと多くのお客様の共通した認識です。

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※ICT総研:2012年4月26日

上記のグラフは、2010年度以降のタブレット端末の日本国内および世界での出荷台数です(2012年度以降は予測値)。iPadを筆頭に、タブレット端末は今や私たちの生活に広く浸透し、程なく日々の生活に欠かせないデバイスとなるかもしれません。自然と、「iPadで何をするか!?」「どんなコンテンツをiPadに載せるか」ということが話題になります。PanoPlazaでも、バーチャルツアーをアプリに埋め込んだり、iBooks形式の電子書籍に埋め込んだり、タブレットを絡めたお仕事を頂くことが多くなりました。慶應義塾大学様・国際航業株式会社様とご一緒させて頂いた「屋内混雑度共有アプリ:aitetter」では、二子玉川ライズ内の混雑度をAndroidから確認できる機能に加え、その場所の様子をパノラマで確認できるようバーチャルツアーを閲覧できるようにしました。Pihana Consulting様と一緒に三越伊勢丹株式会社様にご提案させて頂いた「イセタンハネダストア バーチャルショップ」では、伊勢丹様店舗に設置したAndroid端末の専用アプリ内に、バーチャルツアーを入れました。最近では住宅メーカー様向けに、モデルハウスをバーチャルツアー化し、電子住宅カタログの中で活用するというご提案をしています。最近では、360度パノラマ、バーチャルツアーの打ち合わせをしていると、「iPad」や「タブレット」という単語が必ず出てくるようになりました。

iBooks:作りやすさや配布のしやすさが魅力

バーチャルツアーと、iPadやタブレットという切り口で、PanoPlazaが注目しているのはiBooksです。360度パノラマ写真やバーチャルツアーを、スマホやタブレットで閲覧するには、色々な方法があると思います。アプリとして作りこんでもよいし、ブラウザベースで閲覧できるようにしてもよいし、AndroidであればFLASHで作ることもできます。現在様々な形式のものがありますが、電子書籍として公開することもできます。ただ私たちは、色々なやり方がある中でも、iBooksコンテンツとしてバーチャルツアーをiPadで活用することをお勧めしています。その理由は、iBooksの作りやすさと配布のしやすさ、それから前段で少し触れたiPadのシェアです。iBooksコンテンツは、アップルのAPP STOREでダウンロード可能な「iBooks Author」というソフトを使って制作します。ドラッグアンドドロップなどの直感的な操作で、電子書籍を制作編集することができます。そしてこの「iBooks Author」には、Webの標準的な技術で作られたコンテンツを、ウィジェットとして組み込むことができます。既に制作しているバーチャルツアーをウィジェット化するだけなので、iBooks用に追加の開発や余分な手間がかかることがありません。そういうわけなので、バーチャルツアーをタブレットで見るには、iPad(iBooks)で見るのが一番早くてお手軽ですよ、とお話させて頂いております。

iBooksや電子書籍への期待値は?

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さて、ここまではどちらかというと、360度パノラマのバーチャルツアーを制作しているPanoPlazaスタッフとしての見解でして、実際に電子書籍やiBooksは昨今の世の中的にどうなのでしょうか。iBooksは、発表当初はとても話題になり、日本でも富士重工様の「LEGACY」のプロモーションで制作された事例(右)のように、スタイリッシュなコンテンツも登場してきました。すぐに浸透するものと感じていましたが、現時点でそれほど大きな広がりを見せているわけではなさそうです。一方米国ではそれなりに多くのコンテンツが流通しているようでした。iTunes Storeの設定を「US」にしてしてみると、膨大な数の電子書籍が出てきます。その中で、iBooks Authorによって作られた書籍には、「Made with iBooks Author」という印がついています。iBooks Authorによって作られた書籍は、iPad用、iPhone用でそれぞれ4万件を超えるくらいでした。これが多いのか少ないのか、今後の普及を期待するのに充分な数値なのか、現時点では判断できませんが、今後日本も含めてiBooksのコンテンツがより広く流通するようになる余地は充分あると予測しています。

iPad(iBooks)+バーチャルツアーは、これから!?

※APP BANK:2012年3月28日

一方、こんなデータもあります。上記はiPadユーザーの年齢と性別の分布です。これを見ると、iPadのユーザーは、割と年齢層が高いことがわかります。なんと40代以上のユーザーが、全体の50%を占めています。さらにユーザーの80%が男性であることがわかります。iPhoneやスマートフォンが、若者世代を中心に普及しているのに対して、iPadやタブレットは「大人向け」の渋いデバイスだということが分かります。

また、右の図は、そのiPadユーザーに聞いた「電子書籍を読んだことはありますか?」という調査の結果です。80%以上の人が、「電子書籍を読んだ事がある」と回答しており、90%の人が「電子書籍に興味がある」と回答しています。iPadやタブレット端末が広く普及していくと同時に、「電子書籍」という言葉も広く認知され、多くの人が「電子書籍」に興味を持ち「読んでみたい」と考えていることが分かります。「これからは電子書籍が来る!」と思いたいところなのですが、そういったソフトウェア会社、制作プロダクションの気持ちに水を差すようなデータもあります。

※MMD研究所:2011年11月25日

上記のグラフは、「今後増えたらいいと思う電子書籍のジャンル」についての調査結果です。これを見ると、「電子書籍」はあくまで「紙の書籍」の延長線上であり、まだまだその枠を超えたコンテンツとして認知されていないように見えます。「Webコンテンツをウィジェットとして電子書籍に埋め込む」ことで実現できる、インタラクティブなコンテンツ、リッチコンテンツ、ネットワークと連携したコンテンツという意味では、「期待が薄い」というよりは「それが比較的簡単にできることが、充分に知られていない」状況なのかもしれません。充分に知られていないということは、事例や実績が増えれば、iBooksの活用について認知が広がり、あたらしい機会が生まれてくる可能性がある、ということかもしれません。(という風にとらえたい)

今日は、360度パノラマ写真、バーチャルツアー、iPad、iBooksというキーワードで、少し前にPanoPlazaスタッフ内で議論した内容をもとに、ブログを書いてみました。バーチャルツアーをどのように活用するかという話は、お客様それぞれで最適な形があり、PanoPlazaではどのような開発手法、制作方法でもご提案させて頂く事ができます。一方で、低コストで、スピーディに再利用、活用するための手法として、iPad(iBooks)周りの今後の動きにも注目していきたいと思います。

長くなりましたが…、最後までお付き合い頂きましてありがとうございました! iPadやiBooksのネタについては、今後も継続的に書いて行きたいと思います。

バーチャルツアーに絵が描けたらどうなのか!?

2012年9月

先日PanoPlazaのお客様と雑談中に、「せっかく撮影して作ったバーチャルツアーを、もっと違う視点から活用できないだろうか」というお話をさせて頂きました。最近、住宅メーカー様向けに営業展開していることもあり、360度パノラマ写真のバーチャルツアーコンテンツをそのまま「(例えば住宅の)電子カタログ」や、「(住宅展示場の)接客ツール」としての活用をご提案することも多いのですが、そのお客様が挙げてくれたのは、「プレゼンツール」としての活用でした。

プレゼンツールとして、360度パノラマ写真をどう使うか

「プレゼン」という言葉でまず思い浮かぶのは、社内の企画コンペであったり、競札案件のプレゼン大会などがあると思います。話題に出たのは、例えば「内装デザイン会社やインテリアメーカーが、自社で施行した事例や、ショールームをバーチャルコンテンツで見せる」というものです。または新しく完成した商業施設や文化施設の記者会見で、「この度こういう施設ができました」と、360度パノラマ写真でアピールする、というのも臨場感があって素敵なんじゃないかと思います。

ただ、「空間を作る」「空間を見せる」という意味では、住宅メーカーであっても、大型ビル完成の記者会見であっても、パノラマバーチャルツアーの使い方は変わりません。そこで、「プレゼン」ツールとしてどんな機能があったら良いかを、帰社後に考えてみました。まずは簡単なところから、「バーチャルツアーに絵が描けたらどうなのか」という話を、社内のエンジニアとしてみました。「バーチャルツアーに絵が描けたら、こんなに素敵なプレゼンができる!」というストーリーは置いといて、その3歩くらい手前の、「どうなのか!?」、ということで、簡単なデモを作ってもらいました。

360度パノラマのバーチャルツアーに絵が描けたら

HTML5のcanvasで線が引けるようにしてみたという簡単なデモなんですが、その動画がこちらです。どうでしょう。パノラマとバーチャルツアー自体はそのまんまなんですが、例えばプレゼンの現場で、「このお店のこの部分には相当のお金をかけました!」とか、「今回のこの施設の見どころは…、ココなんです!」みたいな熱意あるプレゼンや、それを盛り上げるバーチャルツアーの活用の光景が、目に浮かぶような浮かばないような…。どうでしょう!?

今後ともよろしくお願い致します。

バーチャルショップでデパ地下へ集客

2011年11月

大丸東京様 バーチャル スイーツ ショップ

今年9月末に公開となった大丸松坂屋様の「大丸東京店 バーチャル スイーツ ショップ」。駅中という立地にあり、充実した商品を幅広い客層に向けて展開する同店のスイーツコーナーを、バーチャル ショップとして構築した企画コンテンツです。ネットショッピングサイトへの集客を狙って公開された同コンテンツは、公開から1ヶ月以上経った現在でもおかげさまで大盛況となっています。百貨店としては初めての取り組みで、また、デパ地下のように賑やかでたくさんの人が訪れる場所を撮影したのも初めてだったのですが、この時の撮影は色々な意味で面白かったし勉強になったので、記事にしてみたいと思います。

開店前の30分の制約

今回の計画では、大丸東京店スイーツコーナー全体の約半分、22店舗25地点の撮影をすることになりました。通常の撮影で特別な問題がなければ、撮影に要する時間は1地点5分程度。25地点であれば、大体2〜3時間で一通り撮影を終えることができます。そのため通常の店舗撮影では、開店前または閉店後の店内を撮影するようにしています。しかし今回は、ごく限られた時間の中で撮影する必要がありました。なぜならスイーツは生ものです。毎日生産工場から新鮮なスイーツが運ばれて来て、それを開店前に陳列するわけです。そして大丸東京店では、人気のスイーツは夕方になると大体売り切れてしまうそうです。そのため閉店後に撮影しようと思っても、ショウケースの中はがらがら。つまり、開店前の限られた時間内、しかも届いたスイーツがキレイに陳列された後に、素早く撮影を行う必要がありました。いろいろと調整して頂いた結果、デパート開店前のあるタイミングで30分間、撮影のお時間を頂けることになりました。

撮影の工夫

30分間で25地点のパノラマを撮るのはさすがに難しかったので、撮影日を2日に分けました。また、当日の撮影を円滑に行うために、事前のテスト撮影も行いました。テスト撮影では当日のスケジュールを確認するとともに、店内の明るさやショウケースの照明、撮影地点の確認なども行いました。デパ地下はとても照明が多く、各店舗それぞれにユニークな装飾や陳列を行っています。照明や陳列の具合によっては、ショウケースへの写り込みで商品が見えなかったり、画像がぼやけてしまったりします。気になる箇所では、その部分だけ照明をつけてもらったり消してもらったり、色々とご協力を頂きました。また、商品の陳列についても事前確認が行われました。せっかくECサイトに商品があっても、バーチャル ショップで陳列されてなかったり、商品が隠れてしまってはサイトに誘導することができません。ECサイトで販売している商品は、なるべく目立つように並べてもらえるよう調整してもらいました。

活気ある開店前のデパ地下で撮影

お客様やご担当者の方々に様々な調整を頂いた上で望んだ撮影当日。商品が届き、スタッフの皆様が慌ただしく開店の準備を進めるなか、撮影が始まりました。ある程度予想していたものの、開店前のデパ地下の活気というか、慌ただしさというのは結構なものです。次々と運ばれてくる商品が丁寧に陳列されて行き、撮影の準備が整って行きます。あらかじめ決めていた順番で店舗を撮影していくのですが、ショウケースの周囲や撮影地点からの商品の見え方など、やはりその場での調整も必要になります。また、お店には商品の配達以外にも様々な人が出入りします。清掃を担当する方や、郵便を持って来てくれる方、店舗スタッフの方、フロア担当の方。上下左右360°のパノラマ写真というのはつまり、撮影しているカメラが見える場所にあるものは全てパノラマに写ってしまうということになります。そのため撮影時にはスタッフの方々に物陰に隠れてもらったり、一時的に通行を遮断したり、近くに写ると具合の悪いものを隠してもらったりと、てんやわんやの30分間でした。今回撮影のサポートに回ってくれた撮影隊のムーランが、「すいませんっ!今から撮影なんでっ!ちょっと隠れてもらえないでしょうかーっ!業務中にホントすいませんっ!」と叫び続け、たった30分間で声を枯らしていたのが印象的でした。

話題を集めたバーチャル スイーツ ショップ

そうして撮影から約2週間、晴れて「大丸東京店 バーチャル スイーツ ショップ」が公開されました。反響もよく、現在でもたくさんのお問い合わせを頂いております。今回のバーチャルショップ構築では、撮影の段取りや撮影時の工夫を重ねたことで、良いコンテンツを作る事ができたと思います。大丸東京店様や、ご担当の皆様のご協力のおかげです。また、普段何気なく訪れては買い物を楽しんでいるデパ地下の裏側を覗き見る事ができて、とても面白い撮影になりました。普段見る事のできない風景や、入る事のできない場所にいけるのは、撮影隊の醍醐味ですね。