隅田川夕景を超高解像度パノラマで撮影

2011年11月

様々な場所から超高解像度パノラマをテスト

当サイトでも「超高解像度パノラマ」として撮影サービスをご紹介していますが、最近 超高解像度パノラマに関するお問い合わせの数が増えてきました。お問い合わせは、解像度や掲載方法などの技術的な内容から、「こんな場所で撮影できるか?」「こんなものを撮影できるか?」等の具体的な内容まで様々です。特に撮影場所については、頂いた情報から何となく撮影の可否や撮影方法を考える事ができるのですが、いかんせんパノラマ撮影には「一発勝負」という面があります。そのため普段から車での外出や撮影の際には機材を用意しておいて、色々なシチュエーションでテスト撮影をするようにしています。

逆光の夕焼け、橋の上からの撮影

この日のテスト撮影では、市街地から高層ビルを見上げる絵面のパノラマ写真を撮る計画でした。車で色々と回りながら撮影地を探したのですが、なかなか開けた場所から高層ビルを見上げられる場所が見つかりません。今が旬の高層建築物といえば、「東京スカイツリー」です。スカイツリーめがけて隅田川を少しずつ上流に登りながら撮影地点を探しましたが、適切な場所をみつけられないまま、スカイツリーのすぐ根元まで来てしまいました。そろそろ陽も沈んでしまうので、スカイツリーはあきらめて別の被写体を探していたところ、橋の上から見えるキレイな夕陽を発見しました。逆光の夕焼け、架橋の上という条件で上手く超高解像度のパノラマ写真を撮影できるだろうか。ということでテーマを切り替えてテスト撮影をしてみました。

3枚1セットのHDR写真を44枚合成

この日は望遠レンズがなかったので、最大85mmのズームレンズを使いました。橋の上からみた夕陽を斜め右上あたりに捉えながら、障害物の入らないギリギリの範囲のパノラマ写真を、4行11列の計44枚の写真から合成することにしました。上記のように少しずつ重なり合う写真を、順に撮って行きます。また、夕陽を正面から撮影することになるため、同じ角度の写真を露出を変えて数枚撮影するHDR合成も行ってみることにしました。HDR合成をすれば、写真の白トビや黒ツブレを多少抑制することができます。3枚1セットで、合計132枚の写真を撮りました。

そして、完成したパノラマ写真が↑こちらです。横が約36,000px、縦が約7,000px、容量約1GBの超高解像度パノラマ写真ができあがりました。1ファイル1GBものパノラマになると、僕の古いMacでは合成するのに6時間もかかります。できあがった画像をレタッチしようにも、僕の古いMacではPhotoshopでファイルを開くだけで30分以上かかります。編集は不可能だったため、そのままの状態で掲載しちゃいました。(※撮影をご発注頂いた際には、ちゃんとしたマシンでちゃんと編集しますよ)
ところで今回のパノラマ写真では、HDR合成を行いませんでした。割と頑丈な橋だったのですが、大型の車両が通った際の振動で、一部の写真がちょびーっとずつブレていたからです。HDRにすれば、もう少し肉眼に近い画質を再現することができるのですが。望遠レンズを使った時の風や振動による影響は大きいですね。

 

バーチャルショップでデパ地下へ集客

2011年11月

大丸東京様 バーチャル スイーツ ショップ

今年9月末に公開となった大丸松坂屋様の「大丸東京店 バーチャル スイーツ ショップ」。駅中という立地にあり、充実した商品を幅広い客層に向けて展開する同店のスイーツコーナーを、バーチャル ショップとして構築した企画コンテンツです。ネットショッピングサイトへの集客を狙って公開された同コンテンツは、公開から1ヶ月以上経った現在でもおかげさまで大盛況となっています。百貨店としては初めての取り組みで、また、デパ地下のように賑やかでたくさんの人が訪れる場所を撮影したのも初めてだったのですが、この時の撮影は色々な意味で面白かったし勉強になったので、記事にしてみたいと思います。

開店前の30分の制約

今回の計画では、大丸東京店スイーツコーナー全体の約半分、22店舗25地点の撮影をすることになりました。通常の撮影で特別な問題がなければ、撮影に要する時間は1地点5分程度。25地点であれば、大体2〜3時間で一通り撮影を終えることができます。そのため通常の店舗撮影では、開店前または閉店後の店内を撮影するようにしています。しかし今回は、ごく限られた時間の中で撮影する必要がありました。なぜならスイーツは生ものです。毎日生産工場から新鮮なスイーツが運ばれて来て、それを開店前に陳列するわけです。そして大丸東京店では、人気のスイーツは夕方になると大体売り切れてしまうそうです。そのため閉店後に撮影しようと思っても、ショウケースの中はがらがら。つまり、開店前の限られた時間内、しかも届いたスイーツがキレイに陳列された後に、素早く撮影を行う必要がありました。いろいろと調整して頂いた結果、デパート開店前のあるタイミングで30分間、撮影のお時間を頂けることになりました。

撮影の工夫

30分間で25地点のパノラマを撮るのはさすがに難しかったので、撮影日を2日に分けました。また、当日の撮影を円滑に行うために、事前のテスト撮影も行いました。テスト撮影では当日のスケジュールを確認するとともに、店内の明るさやショウケースの照明、撮影地点の確認なども行いました。デパ地下はとても照明が多く、各店舗それぞれにユニークな装飾や陳列を行っています。照明や陳列の具合によっては、ショウケースへの写り込みで商品が見えなかったり、画像がぼやけてしまったりします。気になる箇所では、その部分だけ照明をつけてもらったり消してもらったり、色々とご協力を頂きました。また、商品の陳列についても事前確認が行われました。せっかくECサイトに商品があっても、バーチャル ショップで陳列されてなかったり、商品が隠れてしまってはサイトに誘導することができません。ECサイトで販売している商品は、なるべく目立つように並べてもらえるよう調整してもらいました。

活気ある開店前のデパ地下で撮影

お客様やご担当者の方々に様々な調整を頂いた上で望んだ撮影当日。商品が届き、スタッフの皆様が慌ただしく開店の準備を進めるなか、撮影が始まりました。ある程度予想していたものの、開店前のデパ地下の活気というか、慌ただしさというのは結構なものです。次々と運ばれてくる商品が丁寧に陳列されて行き、撮影の準備が整って行きます。あらかじめ決めていた順番で店舗を撮影していくのですが、ショウケースの周囲や撮影地点からの商品の見え方など、やはりその場での調整も必要になります。また、お店には商品の配達以外にも様々な人が出入りします。清掃を担当する方や、郵便を持って来てくれる方、店舗スタッフの方、フロア担当の方。上下左右360°のパノラマ写真というのはつまり、撮影しているカメラが見える場所にあるものは全てパノラマに写ってしまうということになります。そのため撮影時にはスタッフの方々に物陰に隠れてもらったり、一時的に通行を遮断したり、近くに写ると具合の悪いものを隠してもらったりと、てんやわんやの30分間でした。今回撮影のサポートに回ってくれた撮影隊のムーランが、「すいませんっ!今から撮影なんでっ!ちょっと隠れてもらえないでしょうかーっ!業務中にホントすいませんっ!」と叫び続け、たった30分間で声を枯らしていたのが印象的でした。

話題を集めたバーチャル スイーツ ショップ

そうして撮影から約2週間、晴れて「大丸東京店 バーチャル スイーツ ショップ」が公開されました。反響もよく、現在でもたくさんのお問い合わせを頂いております。今回のバーチャルショップ構築では、撮影の段取りや撮影時の工夫を重ねたことで、良いコンテンツを作る事ができたと思います。大丸東京店様や、ご担当の皆様のご協力のおかげです。また、普段何気なく訪れては買い物を楽しんでいるデパ地下の裏側を覗き見る事ができて、とても面白い撮影になりました。普段見る事のできない風景や、入る事のできない場所にいけるのは、撮影隊の醍醐味ですね。

 

撮影隊の記録:ギガピクセル・パノラマ

2011年11月

ギガピクセル・パノラマ写真のテスト撮影


 ギガピクセルパノラマ写真とは、その名の通り超高解像度、特大サイズのパノラマ写真のことです。近年欧米では、このギガピクセル・パノラマを使ったコンテンツが増えてきました。2010年、 360 citiesが公開した、ロンドンのギガピクセル・パノラマは、世界的にも話題になりました。こうしたギガピクセル・パノラマは、広大な景色や美しい景観を、大迫力で再現するために用いられます。また、巨大な絵画や、歴史的に貴重な特大サイズの古地図をデジタル保存するなど、学術的用途にも活躍している撮影技術です。

 パノラマ写真等を使った「バーチャル・ショップ制作サービス panoplaza(http://www.panoplaza.com)」を運用するカディンチェ株式会社では、通常の高画質パノラマ写真のみならず、超高解像度のパノラマ写真を使ったバーチャル・ツアー・コンテンツにも対応することとなり、先日ギガピクセルパノラマ撮影用の自動雲台、「Gigapan EPIC Pro」を購入し、11月から通常のパノラマ写真撮影に加え、超高画質パノラマの撮影がサービスに加わりました。

ギガピクセル・パノラマ写真の撮影手法


 先日デモコンテンツ用にお台場の景色を撮影してきました。上の画像は3行X11列の計33枚の写真を使ってギガピクセル・パノラマを作成した際の、元となる写真のイメージ図です。隣り合う写真同士が少しずつ重なり合うようにして撮影することで、合成作業が楽になります。一眼レフカメラで撮影した場合、1枚の写真が1,000万画素以上ありますから、これらを33枚並べると、相当なサイズの写真が出来上がります。

 

 完成したギガピクセル・パノラマ・コンテンツが↑こちらです。クリックすると新規ウィンドウでコンテンツが開きます。上記事例のパノラマ写真は解像度が横幅25,000px。景観をダイナミックに見せるには充分な大きさです。もっと望遠のレンズを利用し、更にズームが可能なパノラマ写真、例えば対岸のレインボー・ブリッジの上を走る車の形も鮮明に見える程のギガピクセル・パノラマ・コンテンツを制作することも可能です。美しい自然の景観や、大都会の夜景、重要な建築物の建物内など、インパクトのあるコンテンツ作成に利用してみてはいかがでしょうか。
 ギガピクセル・パノラマやパノラマ写真、バーチャル・ショップに関するお問い合わせは、当サイトお問い合わせフォーム、または「バーチャルショップ構築サービス panoplaza(http://www.panoplaza.com)」のお問い合わせフォームよりご連絡下さい。

yasuhiro ichikawa