Kinectいじり

2011年3月

フィジカル・コンピューティングへの取り組み

 先月、カディンチェのオフィスにKinectが到着。Microsoft社のXbox360用に発売された入力デバイスですが、RGBカメラ、赤外線による深度センサー、マイクロフォンが搭載された次世代デバイスがわずか150ドル程度で手に入るとあって、発売から約半年、世界中のエンジニアがこのデバイスをハックして、面白い取り組みが次から次へと世に出るようになってきたところ。
 たとえば、Kinect発売当時から様々な作品を紹介するhttp://kinecthacks.net/では、アーティスティックな作品からおバカな作品、ビジネス向け作品や野心的な作品まで、ありとあらゆるKinectを活用した新しい取り組みを動画でみることができます。
 マウスやキーボードを使わない「フィジカル・コンピューティング」という言葉は、多分僕が大学生くらいだから8年前?、くらいから頻繁に聞かれるようになった言葉。「人に優しいコンピューティング」「直感的な操作」「デバイスを意識しない」「人間の脳とコンピュータのシームレスな連携」云々。。。僕なんかがそういうキーワードを聞いて連想するのは、「攻殻機動隊」や「電脳コイル」の世界で、すぐにSFチックな妄想に行き着いてしまうのですが、そういった世界の一部分が少しずつ実現され始めている。その中のひとつとして、Kinectを使った新しいチャレンジが注目されているのです。

Kinect到着


 そんなKinectですが、当然うちのエンジニア達から見ても魅力的なデバイスだったらしく、ことあるごとに「Kinect 触ってみたい」「Kinect で遊んでみたい」「Kinect..Kinect…」という言葉が聞かれるようになりました。そして先月、弊社青木が「え?Kinectってそんなに安いの?」ということに初めて気がつき、「よしお前ら、そんなもの10個くらい買ってやる!」てな感じでビシッとご発注。晴れてKinectいじりが始まったわけです。
 まずは大体の使い方を習得して、デバイスとしての精度を確認、その後いろいろな実験を繰り返し、この1ヶ月間でだいぶ。。。見た目も汚れた。。そろそろKinect活用の方向性を定めて、具体的な企画を考えてみようかな、というところです。

カディンチェにとってのKinect


 カディンチェにとってKinectの何が魅力的だったかというと、前述した「フィジカル・コンピューティング」の簡易的な実験がまずひとつ。それから、従来から弊社内で開発している「3次元モデリング」の「3Dスキャン技術」をベースにした応用的活用を試してみたいという点がありました。
 「リアルとサイバーの融合」を考える上で、「どこまで実空間の情報をサイバー上に再現できるか」という点と、そのサイバー空間と人間との接点を、「どこまでリアルの感覚に近づけられるか」という点が当面の大きなテーマです。

 デモや今後の実験結果などを、今後Webで紹介していきたいと思います。今日はまずひとつ。先日「プラザスタイル カンパニー」様にてご採用頂いた弊社新サービス「パノラマ・ヴァーチャル・ショップ」ですが、現在Kinectによるジェスチャー操作を試しているところです。以下の動画は、手の動き(手を振る、とめる、前に突き出す など)だけで画面を操作できるようにしたサンプルです。もっと日常的な動作でヴァーチャル空間を操作できるようになれば、今よりずっと奥深い没入感を実現できるのでは。。。「ヴァーチャル空間」+「フィジカル・コンピューティング」に関する研究にも、今後取り組んで行きたいと考えています。


撮影隊の記録:ヒマラヤ=ネパール 後編

2011年3月

歴史と文化と喧噪の街

 最近、同僚の井村くんに借りた「アンチャーテッド」というゲームにハマりました。ネパールのカトマンズを舞台にしたアクション・ゲームなんだけど、街の雰囲気や特徴を上手に再現しています。ゲームの中のカトマンズは、設定が「戦場」になっているのでなんだか散らかった印象なのですが、実際のカトマンズは戦場でもないのに本当に散らかっています。。カトマンズに人口が集まり過ぎて、ここ数年 社会インフラの整備が追いつかないらしい。そのため都市部はほぼ定常的に輪番停電、ゴミの収集が追いつかないためあたりにゴミやら何やらが散在、道路はいつでも大渋滞、デッドロックなんて当たり前。そんな中僕らは、カトマンズを東奔西走。ネパールでの撮影最後の1日、限られた時間の中で撮影を続けたのであります。

ネパール最大のヒンドゥー教寺院:パシュパティナート。

 カトマンズの東側、観光地としても有名なパシュパティナート寺院。敷地内を流れるパグワティ河は、ガンジス河の支流で、多くのヒンドゥー教徒がこの寺院を訪れます。敷地のちょうど中央あたりで行われる火葬が有名で、焼かれた灰がパグワティ河に流されます。火葬の脇で洗濯しているおばちゃんが居たり、そこかしこで身を清める人が居たり、この場の特殊性が観光客に人気の理由みたい。僕はここに来たのは2回目だけど、火葬場の様子は何度見ても衝撃的。ちょっとくらい焼け残ってもそのまま流しちゃうから、焼け残った体の一部が河の中に浮いていたりします。

丘の上の寺院:スワヤンブナート

 今度はカトマンズ西のスワヤンブナート。仏教寺院です。カトマンズ盆地はその昔、湖だったという伝説があり、その頃この丘は湖に浮かぶ唯一の島だったという言い伝えがあります。最近の調査で、カトマンズが湖だったというのは本当らしいことが分かったみたい。なんだかノスタルジック。
 撮影場所は当然観光地が多いので、とにかく人ごみをかき分け、ゲリラ的に撮影という慌ただしい工程が続きます。観光地と言っても、カトマンズの場合は大多数がネパール人。そんな人ごみの中で、おかしな機械(三脚の上でウィンウィン・ぐるぐる動くスペース・バズーカ)を使い、バタバタと撮影する日本人の一行は、とても珍しいモノに見えるようです。

 なので撮影をしているとすぐに人に囲まれてしまいます。日本だったら、珍しいことをしていても「ちらっ」と見られたり、「ごにょごにょ」っとささやかれるくらいなものですが、こっちの人はそうじゃなくて、遠慮なく近づいてきます。子供も大人も珍しそうな顔で寄ってきて、「じーっ」と機械や僕たちを見つめます。「ちょっとオレっちにも触らせてくれよ、その機械」とか、今にも言われそうな感じなので、目が合ったら曖昧な笑顔でごまかします。

最後はパタン

 
 最後はパタン。カトマンズの南、古代の都市。カトマンズで最も古い都市、荘厳な建築物や美術品に溢れた街。当初僕たちはこの日、8カ所で撮影をする計画だったけど、当然そんなスムーズに進むわけがなく、4箇所目のパタンに到着した頃には、もう陽が暮れかけていました。でも返って、それが良かった。陽が沈む前のパタンには、確かに神聖な空気と、奥深い歴史を肌で感じることができました。青白く輝く光の粒子が、街中から湧き上がってくるような感じ(錯覚だけど)。急いで撮影を開始し、何とか陽のあるうちに6カ所ほどの風景を収めることができました。
 今回の記事でご紹介した撮影場所のパノラマ写真ですが、こちらのページに一部を掲載してみました。後になってパノラマ写真やヴァーチャル・ツアーを見てみると、あの時に体験したその場の雰囲気や情景を生々しく思い出す事ができます。しかし、実際に行った事がない人に見てもらったときに、その雰囲気や情景をどこまで伝えることができるか。。画質や機能だけではなく、周囲の音や温度感など、もっともっとリアルな空間をありのままに再現することができないだろうか。うちの会社ではそんな研究を日々続けております。

次回はブータン突入

 ちょうど1年前に実施したヒマラヤ撮影ツアー。ネパールでの撮影を2つの記事に分けて振り返ってみました。次回からは撮影の後半、ブータンでの出来事を思い返してみたいと思います。
 そういえば、最近また撮影のご依頼が増えてきました。パノラマ撮影、ヴァーチャル・ツアーの作成は、こちらからどうぞ。パノラマ写真を利用した、「パノラマ・ヴァーチャル・ショップ」なるサービスも開始しました。詳しくはこちらから!